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機械 第38回 ⏱ 約27分で読めます

同期発電機のベクトル図と三相短絡曲線を「引き算の電圧・ほぼ比例の直線」で攻略

電験三種「機械」科目の三相同期発電機のベクトル図と三相短絡曲線を解説。E=V+Vra+Vxsはキルヒホッフの電圧則そのままだと捉え直し、電機子反作用リアクタンスxaと漏れリアクタンスxℓの違い、そして「短絡曲線」なのに直線になる理由まで、理由とセットで整理します。

🃏 暗記フレーズ:同期発電機は引き算の電圧、短絡曲線はほぼ比例の直線

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この記事で身につくこと

同期発電機の単元に入ると、突然こんな図が出てきます。矢印がナナメに何本も伸びていて、そこに だの だの だの だの、見たことのない記号がびっしり。多くの人がここで「機械は無理だ」と本を閉じます。

でも、안心してください。あのベクトル図がやっていることは、たった一つです。

「もとの電圧から、途中で減った分を引く」。それだけ。

中学校で習った直列回路と同じで、電池の電圧から抵抗で減った分を引けば、残りが出口の電圧になります。同期発電機も、コイルの中で発生した電圧(無負荷誘導起電力 )から、途中で減った分を引いた残りが、端子に出てくる電圧 です。

ただし同期発電機の場合、「減る分」が抵抗だけでなくリアクタンスでも起きるので、単純な引き算ではなく**矢印の引き算(ベクトル)**になります。だから図が斜めになるのです。理由が分かれば、あの図は怖くありません。

この記事を読み終えると、こうなります。

  • の4つの記号が、それぞれ何を指しているか言える
  • 電機子反作用リアクタンス と漏れリアクタンス の違いを、一言で説明できる
  • 「短絡曲線」という名前なのに直線になる理由を、理由つきで説明できる
  • 三相短絡曲線が何のために測られるグラフなのかが分かる

暗記フレーズ:同期発電機は引き算の電圧、短絡曲線はほぼ比例の直線

この単元は、この一文にすべて詰まっています。

「同期発電機は引き算の電圧、短絡曲線はほぼ比例の直線」

前半の「引き算の電圧」が、ベクトル図の話。後半の「ほぼ比例の直線」が、三相短絡曲線の話です。

この単元でつまずく人の多くは、ベクトル図と短絡曲線をバラバラの2つの話として覚えようとしています。実はこの2つは地続きです。ベクトル図で「電圧がどう減るか」を理解しておくと、短絡したときに何が起きるかが自然に見えてきて、短絡曲線が直線になる理由まで一本の線でつながります。

順番に見ていきましょう。

ステップ1:4つの記号の正体を、先に片付ける

まず、記号の意味だけ先に整理してしまいます。ここさえ済めば、あとは足し算と引き算です。

記号読み方・意味どこの電圧か
無負荷誘導起電力(内部誘導起電力)コイルの中で発生した、もとの電圧
端子電圧発電機の出口に実際に出てくる電圧
巻線抵抗による電圧降下電線の抵抗で減った分
同期リアクタンスによる電圧降下磁気の影響で減った分

そして、この4つをつなぐ関係式がこれです。

電機子電流を とすれば、それぞれの電圧降下は次のように書けます。

まとめると、こうです。

長そうに見えますが、やっていることはキルヒホッフの電圧則そのままです。「1周まわったら電圧の合計はつり合う」というあれです。理論科目でさんざんやったやつが、そのまま出てきているだけなんです。

見方を変えれば、こう読めます。

もとの電圧 から、途中で減った分を引いた残りが これが「引き算の電圧」の意味です。

🃏 暗記シート
Q. 三相同期発電機における、無負荷誘導起電力Eと端子電圧Vの関係式は?

なお、この関係式そのものの成り立ち(等価回路の1相分の考え方)が不安な人は、先に〈三相同期発電機の等価回路を「抵抗はナナメ・遅れは弱める・進みは強める」で攻略〉を読んでおくと、この先の話が驚くほどスムーズに入ります。回路図が頭にあるかどうかで、ベクトル図の理解度は倍くらい変わります。

ステップ2:なぜ矢印がナナメになるのか

「引き算なら、数字を引けばいいじゃないか」と思いますよね。それができないのが、この単元の第一関門です。

理由は、抵抗による電圧降下とリアクタンスによる電圧降下では、電圧が現れるタイミング(位相)が違うからです。

電圧降下電流との関係図での向き
(抵抗ぶん)電流と同じ向き電流 と平行
(リアクタンスぶん)電流より90°進む電流 と直角

式の中の が、この「90°まわす」という指示そのものです。 を掛けるということは、矢印を反時計まわりに直角に倒すこと。だから は、必ず直角に組み合わさるのです。

つまりベクトル図は、こう組み立てられます。

  1. まず端子電圧 の矢印を引く
  2. その先端から、電流 と同じ向きに を継ぎ足す
  3. さらにその先端から、直角に を継ぎ足す
  4. 最初の根元から最後の先端まで結んだ矢印が

矢印を継ぎ足していくと、自然と三角形ができあがります。あの図は、この3本の足し算を絵にしただけなのです。

そしてここが大事なところで、足し算の順番を変えても、 の位置は変わりません。試験で図の描き方が本と少し違って見えても、慌てないでください。三角形の形が同じなら同じ図です。

のあいだにできる角度を負荷角 (デルタ) のあいだの角度を力率角 (ファイ) と呼びます。この2つは名前も見た目も似ていますが、まったく別物です。後半で改めて釘を刺します。

🃏 暗記シート
Q. 同期発電機のベクトル図で、抵抗による電圧降下raIとリアクタンスによる電圧降下jxsIは、どんな位置関係で描かれるか?
💡 jを掛ける=矢印を直角に倒す

ステップ3:同期リアクタンスxsは「2つの合わせ技」

ここが、この単元で一番あいまいなまま放置されがちな場所です。

同期リアクタンス は、実は2つのリアクタンスを合わせたものです。

記号名前主磁束への影響イメージ
電機子反作用リアクタンス影響する(増磁・減磁)磁石の力そのものを強めたり弱めたりする
漏れリアクタンス影響しない「はしっこ」を素通りしていく漏れ磁束ぶん

区別のコツは、主磁束に手を出すかどうかの一点です。

(電機子反作用)は、電機子電流がつくった磁束が、磁極がつくっている主磁束に真正面からぶつかっていく話です。力率によって主磁束を弱めたり(減磁作用)強めたり(増磁作用) します。つまり、発電機の心臓部に干渉するリアクタンスです。

いっぽう (漏れリアクタンス)は、コイルの周りをちょろっと回って帰ってしまい、磁極まで届かない「はぐれ磁束」によるものです。主磁束には一切タッチしません。だから「漏れ」なのです。

試験では、この2つはわざわざ分けて計算しないことがほとんどで、最初から合計の が与えられます。ですが「なぜ2つあるのか」を知らないと、 だけを問う設問や、電機子反作用の増磁・減磁の設問が出たときに手が止まります。

電機子反作用の増磁・減磁がまだピンとこない人は、〈三相同期発電機の等価回路を「抵抗はナナメ・遅れは弱める・進みは強める」で攻略〉の「遅れは弱める・進みは強める」の部分を先に押さえてしまうのが近道です。あそこが分かっていれば、 の正体は一瞬で腑に落ちます。

🃏 暗記シート
Q. 同期発電機の同期リアクタンスxsは、どの2つを合わせたものか?

ステップ4:端子を短絡すると、何が起きるか

さて、ここからが後半の三相短絡曲線です。

やることは単純です。発電機の出口(端子)を、3本まとめてつないでしまう。これが三相短絡です。

出口をつないでしまうということは、端子電圧 がゼロになるということです。先ほどの式に を入れてみましょう。

つまり、内部で発生した電圧 まるごと内部の電圧降下に使われる状態です。このとき流れる電流 短絡電流です。

ここで実機の事情がひとつ効いてきます。同期機では、巻線抵抗 は同期リアクタンス に比べてはるかに小さいのです。したがって、ほぼこう扱えます。

短絡電流は、もとの電圧 を同期リアクタンス で割ったもの。ここまで単純化できてしまいます。

そして界磁電流 を大きくすれば、磁束が増え、 が大きくなり、その結果 も大きくなる。この の関係をグラフにしたものが、三相短絡曲線です。

🃏 暗記シート
Q. 同期発電機の三相短絡曲線は、縦軸と横軸に何をとったグラフか?

ステップ5:なぜ「曲線」なのに直線なのか

ここが、この単元で最も引っかかる場所です。

名前は「三相短絡曲線」。なのに、テキストに載っている図はほとんど真っすぐな直線。「印刷ミスか?」と思った人、たくさんいます。私も最初そう思いました。

これはちゃんと理由があります。

比較のために、無負荷飽和曲線を思い出してください。無負荷のとき、界磁電流を増やしていくと、はじめは電圧が比例して上がりますが、途中から寝てきて頭打ちになります。これは鉄心が磁気飽和するからです。鉄はある程度以上の磁束を通せなくなり、電流を増やしても磁束が増えなくなるのです。だから「曲線」になる。

では短絡時はどうか。

短絡すると、大きな電機子電流が流れます。しかもこの電流は、 なのでほぼ**遅れ90°**の電流です。そして遅れ電流の電機子反作用は——減磁作用でしたね。つまり、

界磁が磁束をつくる → 短絡電流が流れる → その電流の減磁作用が磁束を打ち消す

という強烈な打ち消し合いが起きます。結果として、鉄心の中を通る磁束は飽和するところまで増えないのです。

鉄心が飽和しない、ということは、界磁電流と磁束の比例関係が最後まで崩れないということ。だから はきれいに比例し、グラフはほぼ原点を通る直線になります。

無負荷飽和曲線三相短絡曲線
縦軸無負荷誘導起電力 短絡電流
横軸界磁電流 界磁電流
鉄心の状態だんだん飽和する飽和しない
グラフの形途中から寝る曲線ほぼ直線

「短絡曲線が直線になるのは、減磁作用が効いて鉄心が飽和しないから」。この一言を、理由セットで覚えてしまってください。丸暗記だと本番で「あれ、直線だっけ曲線だっけ」と揺らぎますが、理由がついていれば揺らぎません。

🃏 暗記シート
Q. 同期発電機の三相短絡曲線が、曲線ではなく直線になるのはなぜ?
💡 鍵は減磁作用と鉄心の飽和

ステップ6:この2本のグラフは何の役に立つのか

三相短絡曲線は、単独ではあまり出番がありません。無負荷飽和曲線とセットで使うことで、はじめて威力を発揮します。

同じ界磁電流のときの、無負荷飽和曲線から読んだ電圧と、三相短絡曲線から読んだ短絡電流を比べる。これで同期インピーダンスが実測できるのです。

つまりこの2本のグラフは、「この発電機の内部インピーダンスはいくつか」を、実際に測って求めるための道具立てなのです。だから発電機メーカーの試験成績書には、この2本のグラフがほぼ必ず載っています。教科書の中だけの絵ではなく、現場で本当に使われている実測データなんですね。

ちなみに、実機で端子を本当に短絡すると、とんでもない大電流が流れます。ですからこの試験は、工場出荷前の限られた条件下でしか行われない特殊な測定です。「現場で気軽にやる試験」ではない、というのは知っておくと面白いところです。

🃏 暗記シート
Q. 同期発電機の同期インピーダンスを実測するとき、三相短絡曲線とセットで使うグラフは?

まとめ

長い記号の羅列に見えたこの単元も、整理すればこの2本柱だけです。

前半(ベクトル図)

  • は、キルヒホッフの電圧則そのまま
  • もとの電圧 から、途中で減った分を引いた残りが端子電圧
  • は電流と平行、 は電流と直角 → だから三角形になる
  • は主磁束に干渉する、 は干渉しない

後半(三相短絡曲線)

  • 端子を短絡すると
  • 減磁作用が効いて鉄心が飽和しないので、 はほぼ比例=直線
  • 無負荷飽和曲線とセットで同期インピーダンスが求まる

合言葉はこれです。

「同期発電機は引き算の電圧、短絡曲線はほぼ比例の直線」

ここまで来たら、同期機の分野はもう「なんとなく怖い章」ではなくなっているはずです。そもそも同期発電機の構造そのものがまだ怪しい、という人は、〈同期発電機の構造を「固定が電機子・回転が磁極」で直流機との違いごと攻略〉に戻って土台を固めてから来ると、この記事の内容が一段深く刺さります。急がば回れです。

⚠ ここを間違える人が多い

この単元は、覚え違いのパターンがかなりはっきりしています。試験会場で泣かないために、先に潰しておきましょう。

❌ 電動機のベクトル図も、発電機と同じ式で描けると思っている → ✅ ここが最大の落とし穴です。同期電動機では、電力の流れる向きが逆になるので、式も の形になり、発電機の とは の付く側が入れ替わります。発電機の式のまま電動機の図を描くと、リアクタンス降下の矢印が逆向きになり、「遅れ力率なのに のほうが より大きい」というあり得ない図を選んでしまいます。問題文の**「発電機」か「電動機」かを、まず○で囲む**くらいの用心をしてください。

❌ 力率角 を、そのまま負荷角 だと思って答えてしまう → ✅ これが誤答としては最多です。 は端子電圧 と電流 のなす角、 は端子電圧 と誘導起電力 のなす角。まったく別の場所の角度です。問題文に「力率 」と書いてあっても、負荷角が になるわけではありません。 をきちんとベクトル合成したうえで、三角形から求める必要があります。選択肢に問題文と同じ数字があったら、まず疑う。これは鉄則です。

❌ 三相の定格電流を、 で計算してしまう → ✅ 三相の定格電流は です。 を忘れると答えが約1.7倍になり、しかもその値に対応する「もっともらしい選択肢」が用意されていることがよくあります。ここは慌てると本当に落とします。三相と書いてあったら 。指差し確認の勢いで確認してください。

過去問ではこう出た

このテーマは、試験センターが公開している過去問だけを見ても、出題頻度がかなり高い部類です。

  • 令和7年上期 問6
  • 令和6年下期 問6 / 令和6年下期 問15
  • 令和6年上期 問7
  • 令和5年下期 問5
  • 令和4年上期 問5
  • 平成30年 問6
  • 平成29年 問5

並べてみると分かるとおり、ほぼ毎年どこかで顔を出している単元です。しかも問5〜問7という、機械科目の前半の「取りに行くべき問題」の位置に集中しています。ここを落とすと、後半の難問で取り返さなければならなくなり、一気に苦しくなります。

出題のされ方は大きく2通りです。ひとつはベクトル図そのものを選ばせる作図問題(発電機か電動機か、遅れか進みかで正しい図を選ぶ)。もうひとつは短絡電流や同期インピーダンス、短絡比を計算させる問題です。どちらも、この記事で押さえた「引き算の関係式」と「短絡すれば 」の2点が出発点になります。図が読めれば計算も立つ、という素直な単元なので、費用対効果は非常に高いです。

手を動かして確かめたい人は、こちらでどうぞ。

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よくある質問

Q. ベクトル図は、自分でも描けるようにならないとダメですか?

結論から言うと、フリーハンドでざっくり描ければ十分です。定規で正確に、という必要はまったくありません。

理由は、試験で問われるのが「 から矢印を継ぎ足したとき、 がどちら側のどのくらいの位置に来るか」という大まかな位置関係だからです。遅れ力率なら より大きくなる、進み力率なら小さくなることがある——この程度の感覚が手で描けていれば、選択肢はふるい落とせます。

おすすめは、白紙に遅れ力率のベクトル図を1つだけ、何も見ずに描く練習です。これが描けるようになると、進みの場合も電動機の場合も「あそこが逆になるだけだ」と応用が利きます。10回も描けば手が覚えます。

Q. 巻線抵抗 は、無視してよいときと、してはいけないときの見分けがつきません

原則は、問題文が の値を与えているかどうかで判断してください。

同期機では実際に よりずっと小さいので、多くの計算問題では「電機子巻線抵抗は無視できるものとする」と明記され、 として扱えます。この一文があれば、遠慮なく無視してかまいません。

逆に、 の数値がわざわざ書かれている場合は、使わせるつもりで書いてあります。そのときは のように、きちんと合成して計算してください。問題文に出てくる数値は基本的に全部使う、というのが電験の作法です。

Q. 短絡曲線が直線になる理由を、本番で一言で言えるようにするには?

**「減磁作用 → 飽和しない → 比例」**の3つを、この順番でつなげて覚えてください。

短絡時はほぼ遅れ90°の大電流が流れる。遅れ電流の電機子反作用は磁束を弱める(減磁作用)。磁束が抑え込まれるので鉄心が飽和領域まで行かない。飽和しないから界磁電流と磁束の比例が崩れず、短絡電流もきれいに比例する——だから直線。

対比として、無負荷飽和曲線のほうは打ち消してくれる電流が流れないので、素直に飽和して曲線になります。**「短絡=打ち消しあり=直線/無負荷=打ち消しなし=曲線」**とセットで覚えると、どちらがどちらか混乱しなくなります。

同期機の全体像をもう一度つかみ直したい人は、〈三相同期発電機の原理を「磁石グルグル・三相ビリビリ」で攻略する〉から順に読み返すと、点だった知識が線につながります。焦らず、一段ずつで大丈夫です。

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この記事を書いた人

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電験三種を含め、さまざまな資格を一発合格した経験をもとに、 忙しい社会人が最短距離で受かるための教材とYouTube解説を作っています。 暗記シート・講義ノートは累計2,000部を突破し、 多くの合格報告をいただいています。

保有資格

電気主任技術者電気工事士公害防止管理者放射線取扱主任者中学校・高等学校 教員免許
  • ⚡ 電験三種・電験二種の解説動画をYouTubeで公開中
  • 📚「勉強の過程」より「結果を重視」した教材の制作・販売
  • 🏋️ 過去問対策Webサービス「電験ジム」を開発・運営

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