同期発電機のベクトル図と三相短絡曲線を「引き算の電圧・ほぼ比例の直線」で攻略
電験三種「機械」科目の三相同期発電機のベクトル図と三相短絡曲線を解説。E=V+Vra+Vxsはキルヒホッフの電圧則そのままだと捉え直し、電機子反作用リアクタンスxaと漏れリアクタンスxℓの違い、そして「短絡曲線」なのに直線になる理由まで、理由とセットで整理します。
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この記事で身につくこと
同期発電機の単元に入ると、突然こんな図が出てきます。矢印がナナメに何本も伸びていて、そこに だの だの だの だの、見たことのない記号がびっしり。多くの人がここで「機械は無理だ」と本を閉じます。
でも、안心してください。あのベクトル図がやっていることは、たった一つです。
「もとの電圧から、途中で減った分を引く」。それだけ。
中学校で習った直列回路と同じで、電池の電圧から抵抗で減った分を引けば、残りが出口の電圧になります。同期発電機も、コイルの中で発生した電圧(無負荷誘導起電力 )から、途中で減った分を引いた残りが、端子に出てくる電圧 です。
ただし同期発電機の場合、「減る分」が抵抗だけでなくリアクタンスでも起きるので、単純な引き算ではなく**矢印の引き算(ベクトル)**になります。だから図が斜めになるのです。理由が分かれば、あの図は怖くありません。
この記事を読み終えると、こうなります。
- ・・・ の4つの記号が、それぞれ何を指しているか言える
- 電機子反作用リアクタンス と漏れリアクタンス の違いを、一言で説明できる
- 「短絡曲線」という名前なのに直線になる理由を、理由つきで説明できる
- 三相短絡曲線が何のために測られるグラフなのかが分かる
暗記フレーズ:同期発電機は引き算の電圧、短絡曲線はほぼ比例の直線
この単元は、この一文にすべて詰まっています。
「同期発電機は引き算の電圧、短絡曲線はほぼ比例の直線」
前半の「引き算の電圧」が、ベクトル図の話。後半の「ほぼ比例の直線」が、三相短絡曲線の話です。
この単元でつまずく人の多くは、ベクトル図と短絡曲線をバラバラの2つの話として覚えようとしています。実はこの2つは地続きです。ベクトル図で「電圧がどう減るか」を理解しておくと、短絡したときに何が起きるかが自然に見えてきて、短絡曲線が直線になる理由まで一本の線でつながります。
順番に見ていきましょう。
ステップ1:4つの記号の正体を、先に片付ける
まず、記号の意味だけ先に整理してしまいます。ここさえ済めば、あとは足し算と引き算です。
| 記号 | 読み方・意味 | どこの電圧か |
|---|---|---|
| 無負荷誘導起電力(内部誘導起電力) | コイルの中で発生した、もとの電圧 | |
| 端子電圧 | 発電機の出口に実際に出てくる電圧 | |
| 巻線抵抗による電圧降下 | 電線の抵抗で減った分 | |
| 同期リアクタンスによる電圧降下 | 磁気の影響で減った分 |
そして、この4つをつなぐ関係式がこれです。
電機子電流を とすれば、それぞれの電圧降下は次のように書けます。
まとめると、こうです。
長そうに見えますが、やっていることはキルヒホッフの電圧則そのままです。「1周まわったら電圧の合計はつり合う」というあれです。理論科目でさんざんやったやつが、そのまま出てきているだけなんです。
見方を変えれば、こう読めます。
もとの電圧 から、途中で減った分を引いた残りが 。 これが「引き算の電圧」の意味です。
なお、この関係式そのものの成り立ち(等価回路の1相分の考え方)が不安な人は、先に〈三相同期発電機の等価回路を「抵抗はナナメ・遅れは弱める・進みは強める」で攻略〉を読んでおくと、この先の話が驚くほどスムーズに入ります。回路図が頭にあるかどうかで、ベクトル図の理解度は倍くらい変わります。
ステップ2:なぜ矢印がナナメになるのか
「引き算なら、数字を引けばいいじゃないか」と思いますよね。それができないのが、この単元の第一関門です。
理由は、抵抗による電圧降下とリアクタンスによる電圧降下では、電圧が現れるタイミング(位相)が違うからです。
| 電圧降下 | 電流との関係 | 図での向き |
|---|---|---|
| (抵抗ぶん) | 電流と同じ向き | 電流 と平行 |
| (リアクタンスぶん) | 電流より90°進む | 電流 と直角 |
式の中の が、この「90°まわす」という指示そのものです。 を掛けるということは、矢印を反時計まわりに直角に倒すこと。だから と は、必ず直角に組み合わさるのです。
つまりベクトル図は、こう組み立てられます。
- まず端子電圧 の矢印を引く
- その先端から、電流 と同じ向きに を継ぎ足す
- さらにその先端から、直角に を継ぎ足す
- 最初の根元から最後の先端まで結んだ矢印が
矢印を継ぎ足していくと、自然と三角形ができあがります。あの図は、この3本の足し算を絵にしただけなのです。
そしてここが大事なところで、足し算の順番を変えても、 の位置は変わりません。試験で図の描き方が本と少し違って見えても、慌てないでください。三角形の形が同じなら同じ図です。
と のあいだにできる角度を負荷角 (デルタ)、 と のあいだの角度を力率角 (ファイ) と呼びます。この2つは名前も見た目も似ていますが、まったく別物です。後半で改めて釘を刺します。
ステップ3:同期リアクタンスxsは「2つの合わせ技」
ここが、この単元で一番あいまいなまま放置されがちな場所です。
同期リアクタンス は、実は2つのリアクタンスを合わせたものです。
| 記号 | 名前 | 主磁束への影響 | イメージ |
|---|---|---|---|
| 電機子反作用リアクタンス | 影響する(増磁・減磁) | 磁石の力そのものを強めたり弱めたりする | |
| 漏れリアクタンス | 影響しない | 「はしっこ」を素通りしていく漏れ磁束ぶん |
区別のコツは、主磁束に手を出すかどうかの一点です。
(電機子反作用)は、電機子電流がつくった磁束が、磁極がつくっている主磁束に真正面からぶつかっていく話です。力率によって主磁束を弱めたり(減磁作用)強めたり(増磁作用) します。つまり、発電機の心臓部に干渉するリアクタンスです。
いっぽう (漏れリアクタンス)は、コイルの周りをちょろっと回って帰ってしまい、磁極まで届かない「はぐれ磁束」によるものです。主磁束には一切タッチしません。だから「漏れ」なのです。
試験では、この2つはわざわざ分けて計算しないことがほとんどで、最初から合計の が与えられます。ですが「なぜ2つあるのか」を知らないと、 だけを問う設問や、電機子反作用の増磁・減磁の設問が出たときに手が止まります。
電機子反作用の増磁・減磁がまだピンとこない人は、〈三相同期発電機の等価回路を「抵抗はナナメ・遅れは弱める・進みは強める」で攻略〉の「遅れは弱める・進みは強める」の部分を先に押さえてしまうのが近道です。あそこが分かっていれば、 の正体は一瞬で腑に落ちます。
ステップ4:端子を短絡すると、何が起きるか
さて、ここからが後半の三相短絡曲線です。
やることは単純です。発電機の出口(端子)を、3本まとめてつないでしまう。これが三相短絡です。
出口をつないでしまうということは、端子電圧 がゼロになるということです。先ほどの式に を入れてみましょう。
つまり、内部で発生した電圧 がまるごと内部の電圧降下に使われる状態です。このとき流れる電流 が短絡電流です。
ここで実機の事情がひとつ効いてきます。同期機では、巻線抵抗 は同期リアクタンス に比べてはるかに小さいのです。したがって、ほぼこう扱えます。
短絡電流は、もとの電圧 を同期リアクタンス で割ったもの。ここまで単純化できてしまいます。
そして界磁電流 を大きくすれば、磁束が増え、 が大きくなり、その結果 も大きくなる。この と の関係をグラフにしたものが、三相短絡曲線です。
ステップ5:なぜ「曲線」なのに直線なのか
ここが、この単元で最も引っかかる場所です。
名前は「三相短絡曲線」。なのに、テキストに載っている図はほとんど真っすぐな直線。「印刷ミスか?」と思った人、たくさんいます。私も最初そう思いました。
これはちゃんと理由があります。
比較のために、無負荷飽和曲線を思い出してください。無負荷のとき、界磁電流を増やしていくと、はじめは電圧が比例して上がりますが、途中から寝てきて頭打ちになります。これは鉄心が磁気飽和するからです。鉄はある程度以上の磁束を通せなくなり、電流を増やしても磁束が増えなくなるのです。だから「曲線」になる。
では短絡時はどうか。
短絡すると、大きな電機子電流が流れます。しかもこの電流は、 なのでほぼ**遅れ90°**の電流です。そして遅れ電流の電機子反作用は——減磁作用でしたね。つまり、
界磁が磁束をつくる → 短絡電流が流れる → その電流の減磁作用が磁束を打ち消す
という強烈な打ち消し合いが起きます。結果として、鉄心の中を通る磁束は飽和するところまで増えないのです。
鉄心が飽和しない、ということは、界磁電流と磁束の比例関係が最後まで崩れないということ。だから と はきれいに比例し、グラフはほぼ原点を通る直線になります。
| 無負荷飽和曲線 | 三相短絡曲線 | |
|---|---|---|
| 縦軸 | 無負荷誘導起電力 | 短絡電流 |
| 横軸 | 界磁電流 | 界磁電流 |
| 鉄心の状態 | だんだん飽和する | 飽和しない |
| グラフの形 | 途中から寝る曲線 | ほぼ直線 |
「短絡曲線が直線になるのは、減磁作用が効いて鉄心が飽和しないから」。この一言を、理由セットで覚えてしまってください。丸暗記だと本番で「あれ、直線だっけ曲線だっけ」と揺らぎますが、理由がついていれば揺らぎません。
ステップ6:この2本のグラフは何の役に立つのか
三相短絡曲線は、単独ではあまり出番がありません。無負荷飽和曲線とセットで使うことで、はじめて威力を発揮します。
同じ界磁電流のときの、無負荷飽和曲線から読んだ電圧と、三相短絡曲線から読んだ短絡電流を比べる。これで同期インピーダンスが実測できるのです。
つまりこの2本のグラフは、「この発電機の内部インピーダンスはいくつか」を、実際に測って求めるための道具立てなのです。だから発電機メーカーの試験成績書には、この2本のグラフがほぼ必ず載っています。教科書の中だけの絵ではなく、現場で本当に使われている実測データなんですね。
ちなみに、実機で端子を本当に短絡すると、とんでもない大電流が流れます。ですからこの試験は、工場出荷前の限られた条件下でしか行われない特殊な測定です。「現場で気軽にやる試験」ではない、というのは知っておくと面白いところです。
まとめ
長い記号の羅列に見えたこの単元も、整理すればこの2本柱だけです。
前半(ベクトル図)
- は、キルヒホッフの電圧則そのまま
- もとの電圧 から、途中で減った分を引いた残りが端子電圧
- は電流と平行、 は電流と直角 → だから三角形になる
- 。 は主磁束に干渉する、 は干渉しない
後半(三相短絡曲線)
- 端子を短絡すると 、
- 減磁作用が効いて鉄心が飽和しないので、 と はほぼ比例=直線
- 無負荷飽和曲線とセットで同期インピーダンスが求まる
合言葉はこれです。
「同期発電機は引き算の電圧、短絡曲線はほぼ比例の直線」
ここまで来たら、同期機の分野はもう「なんとなく怖い章」ではなくなっているはずです。そもそも同期発電機の構造そのものがまだ怪しい、という人は、〈同期発電機の構造を「固定が電機子・回転が磁極」で直流機との違いごと攻略〉に戻って土台を固めてから来ると、この記事の内容が一段深く刺さります。急がば回れです。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元は、覚え違いのパターンがかなりはっきりしています。試験会場で泣かないために、先に潰しておきましょう。
❌ 電動機のベクトル図も、発電機と同じ式で描けると思っている → ✅ ここが最大の落とし穴です。同期電動機では、電力の流れる向きが逆になるので、式も の形になり、発電機の とは の付く側が入れ替わります。発電機の式のまま電動機の図を描くと、リアクタンス降下の矢印が逆向きになり、「遅れ力率なのに のほうが より大きい」というあり得ない図を選んでしまいます。問題文の**「発電機」か「電動機」かを、まず○で囲む**くらいの用心をしてください。
❌ 力率角 を、そのまま負荷角 だと思って答えてしまう → ✅ これが誤答としては最多です。 は端子電圧 と電流 のなす角、 は端子電圧 と誘導起電力 のなす角。まったく別の場所の角度です。問題文に「力率 」と書いてあっても、負荷角が になるわけではありません。 は をきちんとベクトル合成したうえで、三角形から求める必要があります。選択肢に問題文と同じ数字があったら、まず疑う。これは鉄則です。
❌ 三相の定格電流を、 で計算してしまう → ✅ 三相の定格電流は です。 を忘れると答えが約1.7倍になり、しかもその値に対応する「もっともらしい選択肢」が用意されていることがよくあります。ここは慌てると本当に落とします。三相と書いてあったら 。指差し確認の勢いで確認してください。
過去問ではこう出た
このテーマは、試験センターが公開している過去問だけを見ても、出題頻度がかなり高い部類です。
- 令和7年上期 問6
- 令和6年下期 問6 / 令和6年下期 問15
- 令和6年上期 問7
- 令和5年下期 問5
- 令和4年上期 問5
- 平成30年 問6
- 平成29年 問5
並べてみると分かるとおり、ほぼ毎年どこかで顔を出している単元です。しかも問5〜問7という、機械科目の前半の「取りに行くべき問題」の位置に集中しています。ここを落とすと、後半の難問で取り返さなければならなくなり、一気に苦しくなります。
出題のされ方は大きく2通りです。ひとつはベクトル図そのものを選ばせる作図問題(発電機か電動機か、遅れか進みかで正しい図を選ぶ)。もうひとつは短絡電流や同期インピーダンス、短絡比を計算させる問題です。どちらも、この記事で押さえた「引き算の関係式」と「短絡すれば 」の2点が出発点になります。図が読めれば計算も立つ、という素直な単元なので、費用対効果は非常に高いです。
手を動かして確かめたい人は、こちらでどうぞ。
よくある質問
Q. ベクトル図は、自分でも描けるようにならないとダメですか?
結論から言うと、フリーハンドでざっくり描ければ十分です。定規で正確に、という必要はまったくありません。
理由は、試験で問われるのが「 から矢印を継ぎ足したとき、 がどちら側のどのくらいの位置に来るか」という大まかな位置関係だからです。遅れ力率なら は より大きくなる、進み力率なら小さくなることがある——この程度の感覚が手で描けていれば、選択肢はふるい落とせます。
おすすめは、白紙に遅れ力率のベクトル図を1つだけ、何も見ずに描く練習です。これが描けるようになると、進みの場合も電動機の場合も「あそこが逆になるだけだ」と応用が利きます。10回も描けば手が覚えます。
Q. 巻線抵抗 は、無視してよいときと、してはいけないときの見分けがつきません
原則は、問題文が の値を与えているかどうかで判断してください。
同期機では実際に は よりずっと小さいので、多くの計算問題では「電機子巻線抵抗は無視できるものとする」と明記され、 として扱えます。この一文があれば、遠慮なく無視してかまいません。
逆に、 の数値がわざわざ書かれている場合は、使わせるつもりで書いてあります。そのときは のように、きちんと合成して計算してください。問題文に出てくる数値は基本的に全部使う、というのが電験の作法です。
Q. 短絡曲線が直線になる理由を、本番で一言で言えるようにするには?
**「減磁作用 → 飽和しない → 比例」**の3つを、この順番でつなげて覚えてください。
短絡時はほぼ遅れ90°の大電流が流れる。遅れ電流の電機子反作用は磁束を弱める(減磁作用)。磁束が抑え込まれるので鉄心が飽和領域まで行かない。飽和しないから界磁電流と磁束の比例が崩れず、短絡電流もきれいに比例する——だから直線。
対比として、無負荷飽和曲線のほうは打ち消してくれる電流が流れないので、素直に飽和して曲線になります。**「短絡=打ち消しあり=直線/無負荷=打ち消しなし=曲線」**とセットで覚えると、どちらがどちらか混乱しなくなります。
同期機の全体像をもう一度つかみ直したい人は、〈三相同期発電機の原理を「磁石グルグル・三相ビリビリ」で攻略する〉から順に読み返すと、点だった知識が線につながります。焦らず、一段ずつで大丈夫です。
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