特殊かご形誘導電動機を「始動は外・運転は内」で攻略する
電験三種「機械」科目の特殊かご形誘導電動機(二重かご形・深溝かご形)を解説。始動トルクを大きく・始動電流を小さくするための工夫を、滑りでリアクタンスが変わり電流の通り道が自動で切り替わる仕組みとして理解。「始動は外でドカン、運転は内でスイスイ」の一言で丸暗記から卒業し、2種類の違いまで整理します。
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「特殊かご形」――名前からしてややこしそうで、機械科目の中でも後回しにしてきた方、多いのではないでしょうか。二重かご形に深溝かご形、リアクタンスに表皮効果……用語だけ見ると身構えてしまいますよね。
でも安心してください。この単元、実はたった1つの原理で全部つながっています。しかもその原理は、電気を切り替える賢いスイッチが自動で働いてくれる、という気持ちのいい話なんです。「始動は外でドカン、運転は内でスイスイ」――この一言を体に入れてしまえば、あとは枝葉。苦手だった特殊かご形を、得点源に変えていきましょう。
この記事で身につくこと
- 普通のかご形が抱える「トルクと電流のジレンマ」がなぜ起きるのか
- 特殊かご形の核心=滑りでリアクタンスが変わる仕組みを、式1本で理解する
- 始動時と運転時で電流の通り道が自動で引っ越すイメージ
- 二重かご形と深溝かご形の違いを、混同せずに説明できる
暗記フレーズ:始動は外でドカン、運転は内でスイスイ
まず結論を先に置きます。特殊かご形誘導電動機の全部は、この一言に凝縮されています。
始動は外(そと)でドカン、運転は内(うち)でスイスイ ―― 始動時は外側導体(抵抗大)でトルク大、運転時は内側導体(抵抗小)で効率よく
「外」と「内」というのは、回転子(かご)の導体の位置のことです。始動の一瞬は抵抗の大きい外側を電流が通って力強くドカンと回り出し、回り始めたら抵抗の小さい内側にスイッと乗り換えてスイスイ効率よく回る。この乗り換えが勝手に起きる――ここが賢いところです。なぜ勝手に乗り換わるのかを、これから順番に見ていきます。
STEP1:普通のかご形が抱える「トルクと電流のジレンマ」
特殊かご形の話に入る前に、「なぜ特殊にする必要があったのか」を押さえておきましょう。ここが分かると、以降がグッと腹落ちします。
普通のかご形誘導電動機で、回転子の抵抗(二次抵抗)を変えると、こんなトレードオフが生まれます。
| 二次抵抗 | 始動トルク | 始動電流 | 運転効率 |
|---|---|---|---|
| 大きくする | 大きい(◎) | 小さい(◎) | 悪い(✕) |
| 小さくする | 小さい(✕) | 大きい(✕) | よい(◎) |
見ての通り、あちらを立てればこちらが立たずなんです。始動を力強くしたいなら抵抗を大きくしたい。でもそれだと回り始めてからの効率が悪い。かといって抵抗を小さくすると、今度は始動時に大きな電流がドッと流れてしまう。
理想は「始動時だけ抵抗が大きく、運転時は抵抗が小さい」という都合のいい回転子。それを実現したのが特殊かご形です。つまり――
抵抗を「固定」せず、状況に応じて自動で変える。これが特殊かご形の狙い。
STEP2:核心は「滑りでリアクタンスが変わる」
では、どうやって抵抗を自動で切り替えるのか。カギになるのが滑り s と、それに連動して変わるリアクタンスです。ここが単元の心臓部なので、式1本だけ押さえてください。
回転子(二次側)に流れる電流の周波数を二次周波数 といい、これは滑り に比例します。
( は電源の周波数)。そして導体のリアクタンス は周波数に比例するので、
つまり、滑り が大きいほどリアクタンス が大きくなるわけです。ここで滑りの大小を思い出しましょう。
| 状態 | 滑り | 二次周波数 | リアクタンス |
|---|---|---|---|
| 始動時(止まっている) | 大きい() | 高い | 大きい |
| 運転時(回っている) | 小さい() | 低い | 小さい |
始動の瞬間は滑りが最大(ほぼ1)なのでリアクタンスが大きく、回り始めると滑りが小さくなってリアクタンスも小さくなる。この「リアクタンスが状況で勝手に変わる」性質を利用して、電流の通り道を切り替えるのです。
STEP3:電流の「引っ越し」――始動は外・運転は内
STEP2で分かった「滑りでリアクタンスが変わる」を、回転子の外側の導体と内側の導体にあてはめます。ポイントは、電流はリアクタンスの小さい側(=流れやすい側)を選んで流れるということです。
■ 始動時(滑り大 → リアクタンス大)
内側の導体は磁束に深く囲まれているぶんリアクタンスが大きく、始動時はこれがさらに跳ね上がります。すると電流は内側を避け、**外側の導体(抵抗が大きい)**に集中します。抵抗が大きいので――
**始動トルクが大きく、始動電流は小さい。**まさに理想の始動。「外でドカン」です。
■ 運転時(滑り小 → リアクタンス小)
回り始めると滑りが小さくなり、内側導体のリアクタンスも下がります。すると電流は抵抗の小さい内側の導体にも流れるようになります。抵抗が小さいので――
効率よく、なめらかに回る。「内でスイスイ」です。
| 始動時 | 運転時 | |
|---|---|---|
| 滑り | 大きい | 小さい |
| リアクタンス | 大きい | 小さい |
| 電流の通り道 | 外側(抵抗大) | 内側(抵抗小) |
| 効果 | トルク大・電流小 | 高効率 |
このように、スイッチを人が操作しなくても、滑りの変化そのものが電流の引っ越しを自動で起こしてくれる。特殊かご形の賢さはここにあります。
STEP4:二重かご形と深溝かご形の違い
「原理は分かったけど、二重かご形と深溝かご形の違いが……」という声をよく聞きます。ですが、ここまで来たあなたなら大丈夫。原理はどちらも全く同じ(STEP3のまま)で、違うのは構造の作り方だけです。
| 二重かご形 | 深溝かご形 | |
|---|---|---|
| 構造 | 2層の導体(外側=抵抗大/内側=抵抗小) | 1本の深い溝の導体 |
| 切替の仕組み | 外側導体・内側導体で役割分担 | 深い導体内で表皮効果が電流位置を切替 |
| 特徴 | 大きな始動トルクが得やすい | 構造がシンプル・安価 |
| 主な用途 | 巻上機・圧縮機など重負荷始動 | 中容量の汎用モータに広く採用 |
深溝かご形の「表皮効果」も難しく考えなくて大丈夫です。周波数が高いほど電流が導体の**表面(外側)**に寄る現象で、始動時(二次周波数が高い)は自然と電流が溝の上部(外側)に集まり、実質的に抵抗が大きくなる――結局やっていることはSTEP3と同じ「始動は外」なのです。
二重かご形=物理的に2層/深溝かご形=1本の溝に表皮効果。狙いも原理も同じ。
まとめ
特殊かご形誘導電動機は、用語こそ多いものの、幹はたった1本でした。
- 狙い:始動トルク大・始動電流小を両立したい(普通のかご形のジレンマ解決)
- 核心:滑りが大きいほどリアクタンスが大きい()
- 動き:始動は外側(抵抗大)でドカン、運転は内側(抵抗小)でスイスイ――電流が自動で引っ越す
- 2種類:二重かご形(2層構造)と深溝かご形(表皮効果)、原理は同じ
暗記フレーズ「始動は外でドカン、運転は内でスイスイ」さえ口に出せれば、計算問題でも選択肢問題でも、迷わず判断できます。苦手だと感じていた単元が、実は一番きれいに筋の通った単元だった――そう思えたなら、この記事は役目を果たせました。焦らず一歩ずつ、確実に得点源を増やしていきましょう。
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