単線図と複線図を「ホンモノ図とマトメ図」で攻略
電験三種「電力」科目で意外とつまずく単線図と複線図の違いを、『複線図=実際の電線どおりに描いたホンモノ図』『単線図=複数の電線を1本にまとめた省略図』というシンプルな対比で解説。変圧器の図記号やΔ・Y結線の見え方の違いまで整理し、送電・法規で単線図を確実に読めるようになる1記事です。
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「回路図を見ると、線が3本描いてある図と1本だけの図があって、どっちが正しいのか分からない…」——独学で電力を勉強していると、必ず一度はここで手が止まります。
でも安心してください。これは覚えることが多くて難しい単元ではありません。「2種類の図がある理由」さえ腑に落ちれば、あとは見分けるだけです。この記事を読み終わるころには、送電や法規で単線図が出てきても「ああ、まとめて描いてあるだけね」と落ち着いて読めるようになります。
この記事で身につくこと
- 複線図と単線図の違いをひとことで説明できるようになる
- なぜ2種類の描き方があるのか、その理由が分かる
- 複線図と単線図で変圧器の図記号がまったく違う形になる理由が分かる
- 三相変圧器のΔ結線・Y結線が、単線図でどう省略されるかが読める
- 「単線図=電線1本」というよくある勘違いを卒業できる
暗記フレーズ:「複線図はホンモノ、単線図はマトメ図」
この単元は、たったこの一言で軸が通ります。
- 複線図はホンモノ … 実際の電線の本数どおりに、そのまま実線で描いた図
- 単線図はマトメ図 … その複数本を1本の線にまとめて、スッキリ省略した図
「ホンモノ」と「マトメ」。この2語を握っておけば、どんな回路図が出てきても迷いません。
ステップ1:複線図と単線図、何が違うのか
まずは両者の関係を、正面から並べて整理しましょう。
| 項目 | 複線図 | 単線図 |
|---|---|---|
| ひとことで言うと | ホンモノ図 | マトメ図 |
| 電線の描き方 | 実際の本数どおりに実線を描く | 複数本を1本の実線にまとめる |
| 見た目 | 線が多く、現実に忠実 | 線が少なく、スッキリ |
| 得意なこと | 配線の詳細が正確に分かる | 全体構成がひと目で分かる |
| よく使う場面 | 詳しい配線の検討 | 発電所・変電所の設備図面 |
ポイントは、両方とも「同じ回路」を描いているということです。複線図と単線図は、別々の回路を表しているわけではありません。同じものを、詳しく描くか・まとめて描くかの違いだけなのです。
写真でたとえるなら、複線図が「全員の顔がはっきり写った集合写真」、単線図が「その集団を1つの点で示した地図上のマーク」。指しているのは同じ集団です。
ステップ2:なぜ2種類の描き方があるのか
「わざわざ2種類も覚えるなんて面倒…」と感じるかもしれません。でも、この2つが存在するのには、ちゃんとした理由があります。
三相交流回路では、電線が3本(三相3線)や4本(三相4線)まとまって走ります。これを全部そのまま複線図で描くと、線が多すぎて図がゴチャゴチャになり、全体の構成が読み取りにくくなります。
そこで、「3本まとめて1本の線で代表して描こう」と決めたのが単線図です。発電所から変電所、送電線、配電線まで続く大きな系統全体を、1枚の図でスッキリ見渡せる——これが単線図の最大の強みです。
だからこそ、実際の現場ではこう使い分けられています。
- 全体の構成をつかみたい → 単線図
- 細かい配線を検討したい → 複線図
電験の電力・法規で問われるのは、圧倒的に単線図を読む力です。理由はシンプルで、送電系統のような大きな仕組みを扱うからです。
ステップ3:変圧器の図記号が「別物」に見える理由
ここが多くの人のつまずきポイントです。同じ変圧器なのに、複線図と単線図では図記号の形がまったく違うのです。初めて見ると「別の機器かな?」と混乱しますが、理由が分かれば怖くありません。
| 描き方 | 変圧器の図記号 | イメージ |
|---|---|---|
| 複線図 | コイルの巻線がそのまま見える形 | ぐるぐる巻いた線が2組並ぶ |
| 単線図 | 2つの丸が重なった記号 | 丸が2つ、重なって描かれる |
複線図は「ホンモノ図」なので、変圧器の中身であるコイル(巻線)の形をそのまま描き込みます。一方、単線図は「マトメ図」なので、巻線の詳細は省略し、丸2つの記号でシンプルに代表させます。
覚え方はこうです。
- 複線図の変圧器=巻線が見える … 中身までホンモノを見せる
- 単線図の変圧器=丸2つが重なる … まとめて記号化
「形が違う=別物」ではなく、「同じ変圧器を、詳しく描くか記号でまとめるかの違い」。この一点を押さえれば、図記号の違いはむしろ見分けの手がかりになります。
ステップ4:Δ結線・Y結線が単線図でどう化けるか
三相変圧器の結線も、複線図と単線図で見え方が大きく変わります。ここも「まとめてあるだけ」と分かれば一気にラクになります。
| 結線 | 複線図での描かれ方 | 単線図での描かれ方 |
|---|---|---|
| Δ(デルタ)結線 | 三角形の結線図 | 丸+「Δ」の文字記号 |
| Y(スター)結線 | 星形の結線図 | 丸+「Y」の文字記号 |
複線図では、巻線を実際につないだ形——三角形(Δ)や星形(Y)がそのまま図に現れます。ところが単線図になると、その三角形も星形も省略され、丸の中や横に「Δ」「Y」の文字を添えるだけになります。
つまり単線図の丸記号は、結線の種類を文字でこっそり教えてくれているのです。「丸だけだと結線が分からないじゃないか」と不安になりますが、Δ・Yの文字がその役割を果たしています。
ここでも軸は同じ。「単線図は、複線図の結線を簡略表示しているだけ」。三角形や星形が消えても、情報がなくなったわけではなく、文字記号に姿を変えて残っているのです。
ステップ5:一番の勘違い「単線図=電線1本」を卒業する
最後に、絶対に押さえておきたい落とし穴です。
単線図を見て「電線が1本しかないんだな」と思ってしまう——これは非常に多い誤解です。正しくは、単線図は「複数の電線を1本で代表して表現している」だけ。実際には三相3線や4線が走っているのに、図の上では1本にまとめて描いているのです。
- ❌ 単線図=電線が本当に1本しかない図(手抜き図)
- ✅ 単線図=複数本を代表して1本で描く「約束の図」
この「約束ごと」だと理解しておけば、単線図を見ても「実際は3本走っているんだな」と正しく読み替えられます。試験でも実務でも、ここを取り違えると系統の理解がまるごとズレてしまうので、しっかり卒業しておきましょう。
おまけ:現場では単線図が主役
試験の外の話を少しだけ。実は、実際の発電所や変電所の設備図面は、ほとんどが単線図で描かれています。現場の作業員が日常的に目にするのは、複線図よりも単線図のほうが圧倒的に多いのです。系統全体をひと目で見渡せる単線図は、それだけ実務で頼りにされているということですね。
ちなみにこの単線図の表記、もともとは欧米の電力会社の図面表記から広まった簡略表記法で、いまでは日本の電気設備図面でも標準的に使われています。「まとめて描く」という発想は、国境を越えて電気の世界の共通語になっているわけです。
まとめ
- 複線図はホンモノ、単線図はマトメ図——この一言が単元の背骨
- 両者は別の回路ではなく、同じ回路を「詳しく描くか・まとめて描くか」の違い
- 単線図があるのは、三相の電線をまとめて系統全体をスッキリ見渡すため
- 変圧器は複線図で巻線が見える形、単線図で丸2つの記号——形が違っても同じ機器
- Δ・Y結線は複線図で三角形・星形、単線図で丸+文字記号——情報は文字に姿を変えて残る
- 単線図は「電線1本」ではなく、複数本を代表して1本で描く約束
「線の本数が違う図が2つあって難しそう」だったこの単元も、ホンモノとマトメという2語で整理すれば、もう迷いません。電力・法規で単線図が出てきたら、落ち着いて「これはまとめ図だ」と読み解いていきましょう。あなたのペースで、一歩ずつ確実に進めば大丈夫です。
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